コラム
ご夫婦で公正証書遺言を作成したい、といったご依頼をよくお受けします。
遺言書は、たとえご夫婦であっても連名で作成することはできませんので、夫・妻各自1通ずつ作成いただく必要があります。公正証書の場合、費用もかかってまいりますので、当方は、将来どういったパターンでお亡くなりになっても、書き換えをする必要がないよう、『予備的遺言』を盛り込むようにお勧めしています。
この『予備的遺言』とは、どういったものなのでしょう?
例えば、夫が「全財産を妻に相続させる」と記載した場合、もし、妻が先に死亡していた場合は、この遺言書でできることは何もなくなってしまいます。結果、妻が亡くなった時点で夫は新たに「誰にどう分けたいのか」を考え、遺言書を書き換えなければなりません。もし、公正証書で書き換える場合は新たに作成費用がかかりますし、万が一、妻が亡くなった時点で、夫が認知症になっていた場合は、遺言能力がないということで、遺言書を書き換えること自体が難しくなります。
こういったことにならないよう、面談の際に必ず「妻が先に亡くなっていた場合は、誰にどう分けたいのか?」を確認し、遺言書にその場合まで想定して記載するようにしています。この「もし、妻が先に亡くなっていたら~」と想定した部分が、『予備的遺言』になります。
ここで、ご依頼者が「妻が先に死亡していた場合は、一番世話になった甥の○○と姪の△△に等分に分けて譲りたい」とご希望されれば、その様に記載します。
こうすることで、1枚の遺言書で「夫が妻より先に死亡した場合は妻に全財産を」、「妻が夫より先に死亡していた場合は甥の○○と姪の△△とに等分に財産を」与えることができます。
同様に、妻にも「夫が先に死亡した場合」「自分が先に死亡した場合」の2パターンを想定いただいて、どちらにも対応できるように遺言内容に記載します。
ご夫婦でご依頼をされる際、なぜか「夫が先に死亡する」という前提でお話しをされるご夫婦が非常に多いように感じるのですが、女性の平均寿命が男性より長いとはいえ、実際どうなるかは、その時になってみなければ分かりません。
ご自身で自筆証書遺言書を作成される際も、「財産を与えたい人がもし先に死亡していたら」を想定した一文を入れられることをお勧めします。